この講座では、楽器ごとに応じたEQのポイント、実例を紹介していきたいと思います。
今回は基本中の基本であるドラム、その中でもアコースティックドラムにおけるバスドラムに焦点を当て、イコライジングのポイントをお伝えしていきます。
バスドラEQのポイント
どの楽器でも同じですが、まずその曲の中でバスドラがどういう役割を果たすのか、よく考えてみましょう。
どっしりとした低域を押しだし、曲の厚みを出したい
アタックを効かせ、グルーヴ感の要にしたい
これはあくまでも例ですが、この2つを比べた場合、必要となる音は全く違う音になります。
まずは自分の中でどういう音が理想なのか、しっかりイメージを持ちましょう。
その上で、必要な帯域、不必要な帯域を分け、イコライジングしていくのがいい音への近道です。
著者の基本的な考え方
最低域はベースにまかせ、ローカットをかける
ぼわぼわした中低域はがっつりカット
曲のイメージに合わせて必要な高域をブースト
これが私の基本の考え方です。
人によってはバスドラに低域をまかせるという逆のパターンもあったりしますが、まずはこれを基本として考えてミックスしてみましょう。
キーとなる周波数帯域
最低域(20〜40Hz)
音というよりは、感覚的に感じるといった方がいい音域。
ぱっと聞きではあまり目立たない音域であり、ベースとかぶって音圧を上げにくくなる事から、私はローカットすることが多いです。
ただし、あくまでもアコースティックドラムでの話であり、EDMのバスドラでは必須の音域なので注意。
低域(50〜90Hz)
低域の厚みを決める音域。
「もう少し低域が欲しいな」と感じる場合、このあたりをちょっとブーストしてあげましょう。
逆に、ペチペチした音にしたい場合は、この辺をカットするとうまくいきます。
低めの中低域(100〜200Hz)
バスドラにおいては真っ先に削る音域です。
「モワッ」とした感じの音になる場合、だいたいこの音域が原因。
バッサリカットしてあげましょう。
高めの中低域(300〜800Hz)
このあたりをコントロールすることで、ドラムヘッドの感触が変わってきます。
カットすると音が締まり、ブーストすると「ヘッドを意図的に緩く張った」ような音になります。
中域(1kHz〜2kHz)
アタック音の『音量』をコントロールする部分です。
ブーストすると「バチッ」というビーターがヘッドに当たる音が強調され、ミックスした時にバスドラムが前に出てきます。
しかし、ブーストしすぎると他の音とぶつかる事が多い音域なので、まずは次項の高域で先に調整をし、どうしても足りない時にいじるようにしましょう。
高域(3kHz〜8kHz)
アタック音の『音質』をコントロールする部分。
前項の中域をいじる前に、まずはこちらで必要なアタック感を得られるように調節しましょう。
基本的にはブーストする事が多いですが、ジャズっぽい音にしたい場合、ビンテージっぽい音にしたい場合はカットする方向でイコライジングしてみましょう。
イコライジング例の紹介
イコライジング前の音
バスドラのみ
ドラム全体
※意図的にバスドラの音は少し大きくしてあります。
使用している音源は、Superior Drummer 2の標準キットをそのままパラアウトで使っています。
基本的なイコライジング
- 35Hz以下をローカット
- 400Hzあたりを中心に-20dB
- 8kHzあたりを+3dB
バスドラのみ
ドラム全体
全体的に音がスッキリと締まり、張り付くような音になったのが分かると思います。
これを基本として、自分の好みの音になるよう、周波数帯域を調整していって見ましょう。
ロックなどに向く、アタック重視の音色
- 35Hz以下をローカット
- 180Hzを-4dB
- 4.5kHzをQを広めにして+7.5dB
バスドラのみ
ドラム全体
高域を強調した事で、バチバチッという音になりました。
ロックなどはこのままで、メタルなどのツーバスを使うような曲の場合、もう少し低域を抑えた方が全体的にスッキリと聞こえるようになると思います。
ビンテージっぽい音色
- 60Hz以下をローカット
- 200Hzを-6dB
- 620Hzを+14dB
- 2.1kHzを+3.5dB
- 7.2kHzを-20dB
バスドラのみ
ドラム全体
高域をバッサリとカットし、中低域〜中域を強調する事で、ビンテージっぽい音にしてみました。
正直、他のパートも同じような処理をしないとちょっとバスドラが浮いてしまう感じがありますね。
意図的にビンテージっぽい音作りにする場合などは、こういったイコライジングをする事で目的の音に近づける事が出来ます。
まとめ
バスドラムにおける基本的なイコライジングのパターンをいくつか紹介しましたが、あなたの好みの音はありましたでしょうか?
当然、使っている音源などによってもEQポイントは変わってきますし、目指す音によっても変わる部分はあります。
しかし、今回紹介したのは基礎の部分ですので、アコースティックドラムのバスドラであれば、ある程度応用がききます。
まずは基本のパターンを試してみて、そこから少しずつ、目的の音に近づけるようにしていきましょう!
それでは、また。
■ サンプル音源で使用したSuperior Drummer 2の購入はこちら