今回も、 Nomad Factory MAGNETIC IIを使った、具体的な音作りについて解説をしていきます。
それぞれのパラメータなどについては、前回記事を参照してくださいね。
この連載の第1回はこちら。
注意点
このエフェクトは通すだけで倍音が付加されたり、どちらかというと『意図的に音質を落とし、汚す』という側面があります。
かけ過ぎは逆効果になる場合がありますので、やり過ぎないように使うのがポイントです。
また、このプラグインについているリミッターは先読み式のリミッターのため、わずかではありますがレイテンシーが発生します。
(公式発表によると、44.1kで64sample、48kで70sample、88.2kで128sample、96kで139sample)
まずはサンプル音源
まずはこちらの音源をお聞きください。
最初の8小節がMAGNETICを使わないMix、後半の8小節(0:17〜)がMAGNETICをそれぞれの楽器にインサートしたMixです。
エフェクトの使用不使用で音圧・音量に違いが出ないよう、できるだけ調整をしてあります。
MAGNETICを使用した部分の方が、音の重心が下がり、音質的にちょっと昔っぽい雰囲気になっているのが分かると思います。
ドラムのサンプル
ドラムのみを抜き出したサンプルがこちらです。
前半がMAGNETIC無し、後半の(0:17〜)がMAGNETIC有りのMixです。
セッティングはこんな感じ。
MAGNETICを通すことでハイ落ちする部分をEQで補い、SATURATIONとTAPE COLORで音の一体感を付けています。
一番わかりやすい音の違いは、スネアだと思います。
まるでピッチが下がったかのように音の重心が下がっていますね。
全体的な方向性としても、『分離が良い音』から、『塊のように迫ってくる音』へ変わっているように聞こえるのではないでしょうか。
ベースのサンプル
こちらはベースのみのサンプルです。
今までと同じく、前半がMAGNETIC無し、後半の(0:17〜)がMAGNETIC有りのMixです。
セッティングはこんな感じ。
EQで低音を増量させたので、箱鳴りのような音が付加され、アンプで鳴らしているような、生々しい雰囲気になりました。
TAPE COLORはModernを選択し、アタックを強調しています。
それに比べると、最初の方はDIで録りました、というようなハッキリとした音色です。
エレピのサンプル
こちらがエレピのみのサンプル。
同様に前半がMAGNETIC無し、後半の(0:17〜)がMAGNETIC有りのMixです
セッティングはこちら。
元の音の低音がちょっとモワモワしている感じだったので、今回は逆に低域を削り、アタックを強調してみました。
SATURATIONも強めにし、ブリッっとした芯の強い音をイメージしています。
パキッとした音になると共に、音像がハッキリして押し出しの強い音になりました。
改めて全体像を聞いてみる
それでは、改めてMixのサンプルを聞いてみましょう。
いかがでしょうか。
それぞれの楽器がどう変化したかを理解した上で聞くと、また全体像も違って聞こえてくると思います。
音が中心に集まり、みっしりと詰まった感じに聞こえますね。
すべての楽器に使っている事もあり、MAGNETICを使っている後半の方が、音質的に10年ほど昔へさかのぼった雰囲気になっているのではないでしょうか。
マスタリングで使う
これも選択肢の一つです。
MAGNETICのリミッターを使うことで、普通のブリックウォールリミッターとはひと味違った音を作ることができるでしょう。
しかし、MAGNETICを通すだけでも、倍音の付加や低音の強調など、かなりの音の変化を伴います。
実際にその曲に合っているのか、自分がどういう音にしたいのかをよく考えて使うようにしましょう。
逆に、70年代風の音にしたい、などという明確な目的があるのなら、このプラグインをマスターに挿すだけで、簡単にそれっぽい音へ到達できます。
使いどころを見極めよう
いくつかのサンプルを聞いていただきましたが、ここまでで分かるとおり『音に勢いがでるかわり、古めの音になる』プラグインです。
テープシミュレーターなので当たり前と言えば当たり前なのですが……。
単体で聞くと良さそうだと思って手当たり次第に使うと、逆効果でダサくなってしまうという可能性も多いにあります。
どういう効果を狙って使うのかをよく考え、使いどころを間違えないようにしましょう。
うまく使いこなせれば、ただのテープシミュレーターではなく、万能エフェクトとして使うことができますよ!
さて、3回にわたって、 Nomad Factory MAGNETIC IIについて解説をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
たまにセールなどで安く入手できる事がありますので、まずはデモなどで使ってみてください。
気に入る人は非常に気に入るプラグインだと思いますよ!